介護保険法令を理解し、使いこなそう!

第6回 介護保険制度導入の背景と制度の理念等

一般社団法人あたご研究所 代表理事
後藤 佳苗

保有資格、役職など
一般社団法人あたご研究所代表理事、特定非営利活動法人千葉県介護支援専門員協議会理事、看護学修士(地域看護学)、保健師、介護支援専門員、千葉県介護支援専門員指導者など
【略歴と現在の活動】千葉県職員(行政保健師)として、保健所、精神科救急病院、千葉県庁母子保健主管課、千葉県庁介護保険担当課等に勤務し、2005年4月~現職
ケアマネジャー、介護福祉職、行政等職員、コメディカルなどに対し、年200回以上のセミナーを全国で担当する

法令を理解し使いこなすことは、自分と仲間と事業所を守る第一歩です

千葉県船橋市で、あたご研究所を経営している後藤佳苗と申します。

連載第6回目の本号では、介護保険制度導入の背景と介護保険制度の理念等について、再確認を進めます。

1.介護保険制度導入の背景

日本は世界に類を見ないスピードで高齢化が進んだ国です。高齢化の進展に伴い、要介護高齢者の増加、介護期間の長期化など、介護ニーズはますます増大していきました。しかし、その一方で、核家族化の進行、介護する家族の高齢化など、要介護高齢者を支えてきた家族をめぐる状況は大きく変化していきました。

併せて、景気の低迷、税収の減少なども重なり、高齢者を支えてきた従前の老人福祉制度や老人医療制度による対応には限界を迎えていました。

このようは背景から、厚生省(当時)は、それまでの制度とは全く異なる新たな枠組み(制度)として、高齢者の介護を社会全体で支えあう仕組み(介護保険制度)を創設し、1997(平成9)年に介護保険法が成立し、2000(平成12)年4月から介護保険法が全国一斉施行されました。

図 介護保険制度導入の基本的な考え方
出典:厚生労働省資料を一部改変

2.介護保険制度の基本的な考え方(理念)

介護保険制度が目指す「介護の社会化」を成り立たせるための「基本的な考え(理念)」として、三つの柱(1自立支援 2利用者本位 3社会保険方式)が示されています。ここからは、制度の理念等である三つの柱を確認します。

1)自立支援(介護保険法第1条)

介護保険の理念である「自立支援」とは、単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の尊厳や存在を支えることを指しています。

本人が本人であること(尊厳を保持すること)を支援する、全人的な自立(つまり、自律)を支える制度が介護保険制度です。

法律には、「自立」の文字が使われていますが、法律のねらい(目的)は、全人的な自立(自律)を支援することです。このねらいを実現するためには、個別ケアの徹底が必要になるのです。

2)利用者本位(介護保険法第2条)

介護保険は、要介護状態等になった場合には、利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる制度です。

つまり、介護保険のサービスを利用するためには、利用者の自己決定・自己選択がまずは必要になります。利用者の自己決定・自己選択が、保険給付か否かを決める。介護保険制度が浸透し、利用者主体が当然とされている今みても画期的な考えだと思いますが、保険給付を行政や専門職が決めるのではなく、決定するのは本人であるとするこの考えは、当時は驚きをもって迎えられたものでした。

3)社会保険方式(介護保険法第4条)

介護保険制度は、それまでの制度が採択していた原則として全てを税金で賄う「租税方式(公費負担方式)」ではなく、50%税金、50%保険で負担する「社会保険方式」を採択したこともその特徴です。

介護保険制度において国民は、サービスを受け取るだけの受動的な存在だけではなく、健康でいる努力義務(介護保険法第4条第1項)や公平に経済的負担をする義務(同条第2項)も負う存在です。

旧制度(租税方式)では、市町村がその必要性を判断し、利用する側は反射的な利益の享受にとどまる場合が多かったのですが、社会保険方式が採用されたことにより、利用(利益)に応じた負担を明確にすることができたことも、介護保険制度の特徴なのです。

いまさらの内容ではありますが、忘れてはならないことを確認させていただきました。

第6回はこれにて終了です。ご愛読いただき、ありがとうございました。

次回(連載第7回)は、特に「利用者本位(介護保険法第2条)」との関連する、「介護保険サービス利用の手順」について、確認を進めます。