ケアマネジャーは誰の味方か?(6)~なぜ独立型が少ないのか?~

ニッセイ基礎研究所主任研究員
三原岳

今コラムの第1回では、ケアマネジャー(介護支援専門員)を取り巻く環境を俯瞰する図を示しつつ、
本コラムの目的として、ケアマネジャーやケアマネジメントの「あるべき姿」から考える必要性を指摘しました。
第2回ではケアマネジメントやケアマネジャーが創設された経緯を振り返りつつ、
「代理人」の機能が期待される点を論じました。
第3回では代理人機能を深堀することで、多職種連携の必要性を指摘し、
第4回第5回はインフォーマルケアを巡る話題を取り上げました。

第6回は俯瞰する図に戻りつつ、介護サービス事業者との関係を論じます。

なぜ独立型が少ないのか

下記の図は 第1回で論じた通り、ケアマネジャーを取り巻く俯瞰図です。
第2回から 第5回の議論は主に高齢者との関係性で起きる内容だったので、
ケアマネジャーから高齢者に向かう矢印の議論だったと言えます。
今回の議論はケアマネジャーから介護事業者に向かう左側の矢印に力点を置くと理解して下さい。

ここで起きる問題とは、専ら利害相反ではないでしょうか。
具体的には、ケアマネジャーの事業所が他のサービス事業所の系列に組み込まれているため、
「本人のニーズや実情に合わないのに、親会社のサービスを多く組み込むように要請される」という
状況が指摘されています。

ご案内の通り、単独事業所は1割程度の少数派です。このため、大半のケアマネジャーにとって、
上記の利害相反は大きな問題になっています。いわゆるケアマネジャーの「公正中立問題」です。

では、なぜ独立型が中心にならなかったのでしょうか。この点を探る上では、
やはり介護保険制度を作った時の議論を踏まえる必要があります。

第2回で触れた通り、制度創設当初の議論では、ケアマネジメントを担う組織・人材を表す文言は
「ケアマネジメント機関」という役所っぽい表記になっていました
(介護保険制度史研究会編著『介護保険制度史』)。
その後、ケアマネジメントを介護保険の枠内に組み込むこと、その担い手としてケアマネジャーを
専門職として創設することなどが決まりました。

その際、ケアマネジャーが勤める居宅介護支援事業所を独立させるかどうか、
当時の厚生省(現厚生労働省)内部で議論があったとされています(中村秀一『平成の社会保障』)。
ただ、どんな論点があったのか、公文書や証言などを見ても、少し分からない点があります。

そこで、当時の時代背景を振り返ると、併設規制が導入されなかった理由を読み取れます。
当時は「介護保険サービスが普及せず、保険料を支払ってもサービスを受けられないのでは」という
「保険あってサービスなし」の懸念が示されていました。
これは現在から見れば、杞憂に終わったのですが、当時は大きな問題とされており、
衆議院における介護保険法の修正協議では、サービス確保に関する国の責務を規定する条文が
追加される一幕さえありました。

こうした中、当時の厚生省では「ケアマネジャーに相談すれば、ほぼ確実にサービス利用まで繋がる体制が必要」
「サービスに繋がらなければ、ケアマネジメントも普及していない」と判断された可能性があります。
(なお、「サービスを拡大させるため、併設を制限しなかった」という判断については、意思決定に関わった
当時の厚生省官僚からダイレクトに確認しているのですが、公文書や公式の証言などが残されておらず、
ここでは「筆者の推測」として記述しました)

その結果、併設を制限する規制は導入されず、ケアマネジャーの公正中立問題は制度創設当初から
問題になりました。

例えば、厚生省は制度スタート直前の1999年9月に示された事務連絡で、
一部の介護事業者が利用者の獲得に向けて、系列ケアマネジャーを窓口にした勧誘を行っているとして、
「個々のサービス事業者の事業とは独立した公正中立の遵守が極めて重要」と促しました。
さらに、居宅介護支援事業所の運営基準に相当する厚生労働省令でも、
利用者に提供される介護サービスが「不当に偏することのないよう、公正中立に行われなければならない」
という条文が制度スタート時から盛り込まれています。

つまり、制度創設の時点から「事業所の立場に立つのか、利用者の立場に立つのか、
企業論理と専門職としての倫理のジレンマ」(山崎摩耶『ケアマネジャー バイブル』)が
「公正中立問題」として顕在化したと言えます。

その後、サービス利用を一つの事業所に集中した場合に減算する「特定事業所集中減算」が
2006年度から導入されるなど、一定程度の対策は取られましたが、根本的な課題解決には至っていません。

実際、研究者による実証分析では、「併設型の居宅介護支援事業所でケアプランを作成した方が
サービスの利用が多い」(岸田研作「在宅介護サービスにおける需要誘発仮説の検証」『医療経済研究』)とか、
「地域でケアマネジャーの密集度が濃いと、介護需要が大きくなる」(中村二朗・菅原慎矢『日本の介護』)と
いった結果が公表されており、併設事業所による需要誘発が起きている可能性が指摘されています。

言い換えると独立型ケアマネジャーの少なさが不必要に給付を伸ばしている可能性があるわけです。

このため、筆者は「ケアマネジメント費の有料化なんか議論する前に、独立型を増やす努力を検討すればいいのに」
と思うのですが、残念ながら大勢にはなっておらず、筆者の意見は現時点で独立型ケアマネジャー以上の少数派に
なっています。
ケアマネジャーの皆さんからも是非、独立性を高めるよう声を上げて頂きたいと思います。

次回から図に沿って、市町村との関係を論じたいと思います。