ケアマネジャーがケアマネジャーたりうる為に、私たちの言葉や想いを紡ぎます。

ケアマネジャーは誰の味方か?(5)~右から作るケアプランになっていませんか?~

ニッセイ基礎研究所主任研究員
三原岳

今コラムの 第1回では、ケアマネジャー(介護支援専門員)を取り巻く環境を俯瞰する図を示しつつ、
本コラムの目的として、ケアマネジャーやケアマネジメントの「あるべき姿」から考える必要性を指摘しました。
第2回ではケアマネジメントやケアマネジャーが創設された経緯を振り返りつつ、「代理人」の機能が期待される点を論じました。
第3回では代理人機能を深堀することで、多職種連携の必要性を指摘し、
第4回はインフォーマルケアを巡る話題を取り上げました。

第5回もインフォーマルケアの話題を少し深堀したいと思います。

フォーマルの代わりにインフォーマルケアを入れる発想?

皆さんは法定研修などの場で、インフォーマルケアを取り込むように指導されていると思います。
2021年度介護報酬改定でも、インフォーマルケアを含めて、
「多様な主体等が提供する生活支援のサービス」を考慮することが
特定事業所加算の要件の一つに加えられたので、
その意識は一層、高まっているかもしれません。

では、こうした点をケアプラン作成に落とし込む時、
皆さんの思考回路はどうなっているでしょうか。
ひょっとすると、「フォーマルサービスの代わりに、インフォーマルケアを入れる」という判断に
傾いていないでしょうか。

 これは皆さんの制約条件から考えると、止むを得ない面があります。
第4回で述べた通り、介護保険サービスをケアプランに組み込まないと、
介護報酬の居宅介護支援費を受け取れない構造がある以上、
「まず介護保険サービスを入れる」
「その代替策としてインフォーマルケアを検討する」
と考えるのは当然です。

しかし、利用者の目線で引っ繰り返してみましょう。
例えば、協調性に欠ける筆者が要介護状態になった場合、
デイサービスに行っても、「何で風船バレーをやらなきゃいけないのか」と
理屈を言い始めることは目に見えています。

 むしろ、趣味のサークルなどインフォーマルケアで外出機会を作る方が
筆者の性格に合っている気がします。
確かにインフォーマルケアの場合、主催者が病気になったり、
会場が使えなくなったりすると、なくなってしまう不安定さがあります。

それでもフォーマルサービスに比べて、インフォーマルケアの場合、
自由度が高く、個別性への配慮など融通が利きやすいメリットもあります。
インフォーマルケアはフォーマルサービスの代替物ではありません。

 しかし、ケアマネジャーがケアプラン作成の際、
「フォーマルサービスの代わりにインフォーマルケアを入れる」という発想に傾いているとすれば、
利用者とケアマネジャーの間に齟齬が生じるかもしれません。
結果的にケアマネジャーは「代理人」機能を果たせなくなるかもしれません。

 さらに言えば、多くのケアマネジャーが
「右から作るケアプラン」になっていないか心配になります。
これは利用票第2表の思考回路を指します。
つまり、ケアマネジメントの教科書に沿うと、
第2表の左から目標(短期目標、長期目標)などを記入し、
最後は利用するサービスを検討する流れになると思います。

 しかし、実際には第2表の右から考えている瞬間はないでしょうか。
つまり、「どんな介護保険サービスを組み込むか」という発想です。

こちらも皆さんの制約条件から考えると、仕方がない面があります。
繰り返し述べている通り、介護保険サービスを組み込まないと
報酬を受け取れないわけですし、
親会社から「自社サービスを入れろ」という圧力を
陰に陽に受けているケアマネジャーも少なくないかもしれません。
その結果、大なり小なり、ケアプランの落としどころを
右から考えるのは避けられない面があります。

それでもケアマネジャーが利用者の「代理人」として振る舞えなくなる危険性があります。
つまり、左からケアマネジメントを考えることができれば、
「三原さんにはインフォーマルが適している」と判断できる余地が広がりますが、
右から考えた場合、その思考はフォーマルサービスに偏りがちになります。

さらにインフォーマルケアをケアプランに組み込もうとする時にも、
「フォーマルサービスの代わりにインフォーマルケアをあてがう」と
考えることに繋がります。
これが利用者にとっての選択肢を狭めているのは言うまでもありません。
利用者の視点で考えれば、インフォーマルケアをフォーマルサービスの代替と考えず、
利用者の特性に応じて、インフォーマルケア活用の可能性を幅広く模索して欲しいと思います。

インフォーマルケアの資源をどうやって探すか?

 最後に、「インフォーマルケアの地域資源をどうやって探すか」
という点を述べたいと思います。
例えばですが、
利用者を中心としたエコマップを作ることを励行したら如何でしょうか。
イメージは図の通りです。

具体的には、高齢者本人を中心にして、
同居家族(ペットを含む)を家の中に、親戚や知人などを周りに配します。
さらに、フォーマルサービスは左側に四角で表記し、
趣味や生き甲斐、地域の繋がりなど、いわゆるインフォーマルケアを右側に円状で記入します。
その際、高齢者本人や家族が自ら作った場については、二重線でマークするというルールです。
(これは勝手に筆者が作ったルールなので、自由に変えて下さっても結構です)

その上で、上記のルールをベースに、
皆さんの担当している事例をエコマップとして2~3枚ぐらい作ってみて下さい。
そうすれば、自分が把握できていること、把握できていないことがクリアになるほか、
「把握していない情報は誰から取ればいいか」といった点を考えられるようになり、
第3回で述べた多職種連携に役立つと思います。

さらに、この作業を通じて、本人や家族を取り巻くインフォーマルケアの繋がりを
理解できるのではないでしょうか。
そして、エコマップの作成を何回か繰り返せば、
インフォーマルケアに関しての感覚や事例、知見が集まるようになると思います。
知り合いや同僚のケアマネジャーと一緒に、エコマップを見せ合うのも一案かもしれません。

こうしてインフォーマルケアに関する感覚が身に付けば、
街の風景が変わって見えるようになるかもしれません。
例えば、今まで何気なく前を通過していた図書館とか、囲碁や将棋の会所、喫茶店、
犬の散歩サークルの案内板などを見た時にも
「◎◎さんにとってのインフォーマルケアの選択肢になるかも」と
考えるアンテナが立つのではないでしょうか。 

 繰り返しますが、インフォーマルケアはフォーマルサービスの代替物ではありません。
さらに、インフォーマルケアも含めた生活支援が可能になれば、
利用者の選択肢は広がり、ケアマネジャーも「代理人」として振る舞えるようになります。

第4回で述べた報酬上の制約条件を踏まえると、
最後は「右から作るケアプラン」になるのは止むを得ない面がありますが、
エコマップの作成とか、地域資源探しなどを通じて、
インフォーマルケアのセンスも磨いて頂きたいと思います。

第6回は、 第1回で触れたケアマネジャーを巡る関係図に立ち返りつつ、
事業者との関係を論じます。

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