新しい運営指導(旧・実地指導)マニュアルを読んで、運営指導対策を万全にしよう!
天晴れ介護サービス総合教育研究所株式会社
代表取締役
榊原 宏昌

介護現場をよくする研究・活動を仕事としています!
京都大学経済学部卒業後、特別養護老人ホームに介護職として勤務。社会福祉法人、医療法人にて、生活相談員、グループホーム、居宅ケアマネジャー、有料老人ホーム、小規模多機能等の管理者、新規開設、法人本部の仕事に携わる。
15年間の現場経験を経て、平成27年4月「介護現場をよくする研究・活動」を目的として独立。
介護福祉士、介護支援専門員
執筆、研修講師、コンサルティング活動を行う。
著書、雑誌連載多数(日総研出版、中央法規出版、ナツメ社など)。
年間講演、コンサルティングは300回を超える。ブログ、facebookはほぼ毎日更新中。
オンラインセミナー、YouTubeでの配信も行っている。
運営基準や加算要件とともに、運営指導についても熟知して、自信を持って日々の業務にあたりましょう!
はじめに
さて、いつ出ることかと待ち望んでいた、介護保険施設等運営指導マニュアル(介護保険最新情報vol.1062)が発出されました。
これは、介護保険施設等指導指針(介護保険最新情報vol.1061)の内容を補完するものとして作成されたもので、平成22年以来の改訂となります。
これらの文書は、都道府県・市町村向けのものではありますが、運営指導がどのような根拠に基づいて、どのように行われるかを知っておくことは、
事業所運営においても重要であると考えます。
ただ、これらの文書は、指針の改訂版である介護保険最新情報vol.1061は42ページ、マニュアルの改訂版である介護保険最新情報vol.1062は2221ページ…(!)と、大変ボリュームのある内容です。
※マニュアルについては本文は61ページですが、各サービス種別ごとの別途資料も合わせると2221ページということなります。
本稿では、さすがに全てを網羅することはできませんが、運営指導(旧・実地指導)について、新しく盛り込まれた内容とともに、
居宅介護支援にとって重要と思われる内容について触れていきたいと思います。
ぜひ、これをきっかけに、指針・マニュアルについて読破して頂けたら……と思います。
なお、文末に、本稿のガイドとなる動画をつけましたので、あわせてご覧頂けたら、と思います。
「名称」も「方法」も変わる!運営指導
まず、介護保険施設等指導指針(介護保険最新情報vol.1061、以下「指針」とする)について見ていきましょう。
「指針」は以下の項目から構成されています。
第1 目的
第2 指導方針
第3 指導形態等
1 集団指導
2 運営指導
(1)運営指導の形態
(2)実施頻度
(3)運営指導の内容
第4 指導対象
(1)集団指導の対象
(2)運営指導の対象
(3)都道府県知事及び市町村長の連携
第5 指導方法等
1 集団指導
(1)実施通知
(2)指導方法
2 運営指導
(1)実施通知
(2)指導方法
(3)運営指導の留意点
(4)指導結果の通知等
(5)報告書の提出
第6 監査への変更
第7 指導にあたっての留意点
以上指針の中で、
「第3 指導形態等、2 運営指導、(1)運営指導の形態」には
以下のように書かれています。
- 運営指導は次のア~ウの内容について、原則、実地に行う
- ア 介護サービスの実施状況指導
個別サービスの質(施設・設備や利用者等に対するサービスの提供状況を含む)に関する指導 - イ 最低基準等運営体制指導
基準等に規定する運営体制に関する指導(ウに関するものを除く。) - ウ 報酬請求指導
加算等の介護報酬請求の適正実施に関する指導 - なお、ア~ウの実施については、効率的な実施の観点から、
それぞれ分割して実施することも差し支えない。
つまり、新しく示された運営指導とは、
「ア 介護サービスの実施状況指導」「イ 最低基準等運営体制指導」「ウ 報酬請求指導」から
なっているということです。
また、介護保険施設等運営指導マニュアル(介護保険最新情報vol.1062、以下「マニュアル」とする)では、
- 「ア」~「ウ」については、これまでと同様に通常は同時に実施することを想定
- 指導事務の効率化や効果、緊急性等を勘案し、それぞれ別の時期に実施することも可能
- 感染症等の流行により当該年度に実地に行うことができない場合に実地が必要な「ア」を次年度以降に延期し、「イ」「ウ」についてのみ実地以外の方法(オンライン会議システム等の活用等)で確認項目及び確認文書に基づく指導を行う等の方法が考えられる
- ただし、延期した「ア」の実地による指導についても、状況が改善した場合は、追って実施することが必要
- つまり、「ア」~「ウ」の指導については、一の介護保険施設等に対し実施時期を分けた場合、3種類全ての指導を実施した場合に運営指導の実績があったものと考える
と補足されています。
なお、「イ」「ウ」については、今後は実地で行わない場合もあることから、運営指導と名称を改めた、との説明もありました。
また、介護保険施設等指導指針(介護保険最新情報vol.1061)には、
「介護保険施設等監査指針」も含まれていますので、あわせて確認しておきましょう。
「オンライン」による指導が可能に!
指針の「第5 指導方法等、2 運営指導、(2)指導方法」には
以下のように示されています。
- 運営指導は、関係者から関係書類等を基に説明を求め面談方式で行う。
- なお、施設・設備や利用者等のサービス利用状況以外の実地でなくても確認出来る内容(最低基準等運営体制指導及び報酬請求指導に限る)の確認については、情報セキュリティの確保を前提としてオンライン等を活用することができる
つまり、前項の「イ」「ウ」については、オンラインでの指導が可能になった、ということです。
コロナ禍で一歩進んだ領域と言えそうですが、新しい試みでもあるので、マニュアルには以下のように補足されています。
- 介護保険施設等において作成、保存等が行われている各種書面について、
当該書面に代えて電磁的記録により管理されている場合は、
ディスプレイ上で内容を確認することとし、別途、印刷した書類等の準備や提出は求めないようにする - 各種の書面を電磁的記録として管理しつつ、
併せて印刷し紙媒体でも管理している場合は、紙媒体を確認してもよいのですが、
ディスプレイ上に映し出された内容と印刷されたものとを突合しなければ厳密には確認したことにはならない - このようなことから、あくまでも運営指導においては、文書等を電磁的記録により管理している場合(電磁的記録として文書等を作成するが、全て印刷した紙媒体で通常管理している場合を除く)は、行政機関の担当者が介護保険施設等側の担当者から説明を受けながら、ディスプレイ上に映し出された文書等を閲覧する方法で内容を確認する
正直、何回読んでも分かりづらい内容ではありますが、
オンラインで指導するのなら、ディスプレイ上のもので確認するということになるでしょう。
標準確認項目と標準確認文書に基づく指導
指針の「第3 指導形態等、2 運営指導、(3)運営指導の内容」には以下のように示されています。
- 運営指導の実施に当たっては、基準等への適合性に関し、介護保険施設等による自己点検を励行するものとする
- 「ア」「イ」については、介護サービスの質の確保、利用者保護等の観点から重要と考えられる標準的な確認すべき項目及び標準的な確認すべき文書に基づき実施
- サービス種別毎の確認項目及び確認文書については別に定める。
- また、運営指導(「ア」「イ」に限る)においては、確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとし、確認文書以外の文書は原則求めない
以上の内容については、令和元年に発出されている「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」(介護保険最新情報Vol.730)ですでに示されているとおりです。
今回、新しくなったところは、サービス種別毎の確認項目・確認文書について、ほぼ全ての介護保険サービスが網羅されたことと、
令和3年度介護報酬改定の内容を盛り込むとともに、個別サービスの質を確認する事項と、個別サービスの質を確保するための
介護保険施設等における必要な体制状況を確認する事項の二つのカテゴリーに分けられたことです。
※別添1確認項目及び確認文書より

分かりやすい一覧ではありますが、これだけで「運営基準」を理解することはできないため、また、総則的な内容については網羅されていないため、
いわゆる赤本(介護報酬の解釈 2 指定基準編 令和3年4月版)を改めて熟読しておく必要はあるでしょう。
また、「確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとし、確認文書以外の文書は原則求めない」とありますが、
内容に不備がある等、確認文書では確認項目が確認できない場合は、当該確認文書以外の文書等を提示等するよう介護保険施設等側に求めることは可能であるため、注意が必要です。
なお、居宅介護支援においては、原則として介護支援専門員1人あたり1 名~2名の利用者についてその記録等を確認する、とされていますのであわせて確認しておきましょう。
加算・減算についての指導
「ウ 報酬請求指導」では、加算等の介護報酬請求の適正実施に関する指導が行われます。
当たり前のことではありますが、加算要件を理解しておくことが基本となるため、マニュアルの「別添3各種加算・減算適用要件等一覧」で示された内容を活用するとよいでしょう。

ただし、こちらもいわゆる青本(介護報酬の解釈 1 単位数表編 令和3年4月版)で示されている
通則的な内容は網羅されておらず、また、図表や様式例についても掲載されていないため、
やはり、青本に当たりながら確認することが大切です。
おわりに
以上、新しくなった指針、マニュアルの中でも新しい内容や重要と思われる箇所について取り上げましたがいかがでしたでしょうか?
最後に、私が日頃考えている「運営指導対策」についてご紹介しておきたいと思います。
それは、
1.法令等の理解
2.法令等の実施と記録
3.実施内容とその根拠についての説明
以上の3点です。
このためには、運営基準や加算要件の理解と実施が不可欠ですが、運営指導自体についても熟知して、何が要求されるのかを知っておくことも大切です。
自信を持って日々の業務にあたるためにも、運営指導についても学んでおきましょう。
本稿がそのきっかけとなれば幸いです。
今回のガイド動画はこちらからご覧頂けます!
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