課題整理総括表の活用 前編

合同会社鐵社会福祉事務所 代表社員
てつ福祉相談室 管理者
鐵 宏之

法定研修や事例検討会、地域ケア会議等で提出させられるアレです。

何で書かないといけないの? 帳票ばっかり増やしやがって(怒)と思う方もいるのではないでしょうか。

そんな不遇?な課題整理総括表ですが実はなかなか面白い特長があり、気軽に使ってみることで得られる効果があります。一言でいえば「アセスメントの全体像の見える化」です。

課題整理総括表が世に生まれて10数年、すっかり学びの機会も減ってしまいました。せっかくですので、この場を借りて課題整理総括表についてテッツなりに解説しようと思います。

平成26年6月17日厚生労働省老健局振興課より「課題整理総括表・評価表の活用の手引き」についての事務連絡が発出されました。これは平成24年3月―平成25年1月にかけて厚生労働省老健局内で行われた「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」における中間的な整理における成果物の一つとして示されたものです。ここでは「適切なアセスメント(課題把握)が必ずしも十分ではない」「サービス担当者会議における他職種協働が十分に機能していない」という指摘されています。それを受けて「利用者の状態等を把握し、情報の整理・分析等を通じて課題を導き出した過程について、多職種協働の場面等で説明する際に適切な情報共有に資すること」を目的に課題整理総括表が開発されました。

介護支援専門員はケアプラン作成に先立ちアセスメントを実施し、その内容をアセスメントツールに記入します。厚労省は課題分析標準項目(23項目)を満たすこととし、全社協方式やインターライ等の様々なアセスメントツールが開発されました。

これらのアセスメントツールの弱点は「原因と結果及び各課題の関連性」を把握することが困難なことが言えます。例えば全社協方式は12ページありますが、歩行や排泄、食事等現状について記載する程度であり何より引き起こされているのか、各分野との関連性を記載しにくい構成となっています。

ケアマネジャーの作成するケアプランはアセスメントの過程を記載することができないという構造上の欠陥があります。令和3年3月31日介護保険最新情報Vol958において1表の参考様式が「利用者及び家族の意向を踏まえた課題分析の結果」と改まった経緯がこれによるものです。しかし、アセスメントの全過程を記載することはできないことには変わりません。今も昔もケアプランというのはケアマネジャーによるアセスメントの過程を口頭等により説明することを必要とする帳票なのです。

ケアマネジャーがサービス担当者会議等において、ケアプランの構造上の欠陥を理解した上でアセスメントの過程を丁寧に説明できていないのではないかということが前述した中間整理における指摘です。これは①アセスメントの理解が不十分②ケアプランの構造理解が不十分③それらを学ぶ機会が不足している、ということが要因ではないかと考えられます。課題や課題分析については過去に作成したコラムを参考にして頂ければ幸いです。

 背景の説明なく法定研修等で「書いてこい」と言われるのはあまりに乱暴であると思います。ここからは課題整理総括表の持つ機能や活用場面について解説します。厚労省マニュアルに書かれていないようなこともありますが、一つの考えとして受け止めて頂ければ幸いです。

1.ケアプランの作成時(新規、変更、更新等)

課題整理総括表はアセスメントの全体像を把握する目的もあり、アセスメントツール→課題整理総括表→ケアプラン作成と活用できます。これにより頭の中で考えていたケアプラン2表における「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)に至るまでの過程を言語化、見える化することができます。

イラスト4

2. 支援の振り返り

セルフスーパービジョンの機能です。これは更新研修や事例検討における課題整理総括表の活用方法です。アセスメント→課題整理総括表→ケアプランが基本的な作成順序ですが元々あるケアプランについて課題整理総括表を作成し直すことにより、課題整理総括表とケアプランの間に相違が生じます。例えばケアプラン作成が1年前であり、現時点で課題整理総括表を作成することにより1年分の差が生じます。この差は利用者や家族の変化、支援による変化、ケアマネジャーの考え方の変化等が考えられます。この変化を考えることが、セルフスーパービジョンに繋がります。元々あるケアプランと辻褄を合わせるものではありません。残念ながらこの機能を法定研修や事例検討で説明がされないため、辻褄合わせで作成してしまっている現状かと思います。

3. サービス担当者会議

課題整理総括表の本来の活用方法の一つです。課題整理総括表によりケアマネジャーのアセスメントの全体像が把握しやすくなることで、多職種がケアマネジャーの思考の理解や支援方針、ケアプランの共有が容易となります。課題整理総括表の研修においてサービス担当者会議で利用者や家族、サービス担当者に配布することもできると解説する講師もいますがお勧めできません。配布はサービス担当者に留めるべきです。課題整理総括表はケアマネジャーの思考過程であり、その中には利用者や家族には示すことができない配慮が必要なものも含まれています。ケアプランには反映できない課題等です。例えば家族関係に課題があったとしても、ケアプランには反映は難しいしょう。サービス担当者には、ケアプランには反映されていない課題もあり、それを共有してもらうという効果があります。

4. スーパービジョン

新人もベテランもケアマネジャーの頭の中を通ってケアプランとして出力される過程は共通です。出力されるまでの過程の言語化が不得手ではないかという指摘が中間整理においてなされています。課題整理総括表の作成過程を見ることにより、作成者のアセスメントプロセスや思考を理解することに繋がります。スーパーバイザーは課題整理総括表の書き方を説明するのではなく、気づきを促すように質問することが重要です。

次回は課題整理総括表の構造及び具体的な記載方法について解説致します。