遠藤 貴美子
株式会社わかばケアセンター 居宅業務管理課 課長
日々の給付管理や突然のシャドウワーク、多職種との調整に追われ、ケアマネジャーの皆さんのスケジュールは常にいっぱいのことと思います。目の前の課題解決に奔走する中で、「優先順位は高いけれど、つい後回しになりがちなケア」はありませんか? その一つが「口腔ケア」ではないでしょうか。
後回しにされがちなケア
2024年の報酬改定以降、口腔・栄養の一体的取組の重要性はさらに増していますが、現場での定着には難しさもあります。口腔ケアはリハビリのように「歩けるようになった」という劇的な変化が見えにくく、利用者さんやご家族から「毎日、口腔ケアやっているけど、何か意味あるの?」と言われてしまうことも少なくありません。
また、もともと歯科は苦手に思う人が多く(あの機械音と薬品のにおいは独特ですよね)、歯が痛い、入れ歯が壊れたなど困ったことがない限り足が遠のく場所です。
さらに、介護保険の限度額の枠の中では、清拭やおむつ交換が優先で口腔ケアまでは余裕
がないという現状もあるのではないでしょうか?
しかし、お口の健康は、誤嚥性肺炎の予防だけでなく、「食べる楽しみ」「おしゃべりする意欲」といった、その人らしい暮らし(QOL)の土台を支えるものです。
効果を感じるまでの「時間」をどうするか
「口腔ケアの効果を感じとれるまでには時間がかかります。しかし、継続することが大切です」
この言葉通り、口の環境改善には根気が必要ですが、では、この「時間がかかる」という期間を、どうしていけばよいのでしょうか。
毎月の訪問時、利用者の様子に細かく目を向けてみてください。
「そういえば、以前より食事の時のむせ込みが減ったかもしれない」
「先月よりも体重が増えているのは、食事がしっかり噛めて栄養が摂れているからでは?」
「原因不明の微熱を出さなくなったな・・・」
これらは一見すると、口腔ケアとは直接結びつかないような変化に見えるかもしれません。しかし、これらこそが口腔ケアの継続によってもたらされている、かすかですが確実な成果なのです。
このような症状が好転したきっかけが、口腔ケアの重要性を認識し、自分でやってみようというセルフケアへ結びついていくのです。
歯科専門職・介護スタッフとの協働
ケアマネジャー一人の力で、利用者の口腔ケアの継続を支えることは不可能です。ここで重要になるのが、多職種連携によるチームアプローチです。
まず強力なパートナーとなるのが、歯科医師や歯科衛生士といった歯科専門職です。在宅での口腔ケアが困難な事例や、認知症による拒否が強い事例では、プロによる介入を検討します。「プロの手が入る」ことで、家族やヘルパーの心理的ハードルが下がり、その利用者に合った正しいケアの手技や声かけのコツがチーム内で共有されます。さらには、日々の生活を最も近くで支える訪問介護ヘルパーや、通所介護(デイサービス)のスタッフとの連携も欠かせません。サービス提供票の中にただ「口腔ケア」と位置づけるだけでなく、「どのように実施しているか」「拒否があるときはどう対応しているか」をサービス担当者会議や連絡ノート等で細かく情報共有します。
「デイサービスではレクリエーションの流れで楽しく歯磨きができている」「ヘルパーの〇〇さんの声かけだとスムーズにお口を開けてくれる」といった情報があれば、それを家でのケアや家族へのアドバイスにも活かすことができます。チーム全員が同じ方向を向くことで、孤立しがちな在宅ケアにおいて継続を可能にする仕組みとなります。
毎日の継続を支えるのは私たち
口腔ケアは、すぐに効果が出るものではありません。まるで、私たちのダイエットのように、地味で、面倒に感じられる作業の積み重ねです。しかし、その地道な継続こそが、数ヶ月後、数年後の利用者の「いつまでも口から食べたい」を守る唯一の道です。
「口腔ケアの効果を感じとれるまでには時間がかかりますが、継続することが大切です。」
この言葉を、私たちは利用者とそのご家族、介護職員にも伝え、利用者のお口の健康リテラシーを低下させないよう努力していく必要がありますね。
お口の中をみることはハードルが高いかもしれません。しかし、私たちは利用者の生活を一番身近で観察することができる専門職です。そして、得られた情報を多職種につなぐ役割もあります。
今日からのアセスメント・モニタリングでは、利用者の「お口の元気」に一歩踏み込んで耳を傾けていただき、ささやかなで確実な変化を共に喜び合えるようなアプローチを始めてみてください。







